賞与戦略再設計論

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賞与戦略再設計論

 

 人件費の最適解へ 

───夏賞与の分岐点 

2026年、日本企業は大きな転換点に立たされています。厚生労働省の最新調査では、企業の9割以上が賃上げを実施し、改定額も過去最高水準を記録するなど、賃上げ圧力はかつてない高まりを見せています。
一方で、人件費は確実に増加するものの、「人を増やしても業務の質が安定しない」「教育コストばかりが膨らむ」といった声も深刻です。夏の賞与という大きな支出を、単なる「過去への報酬(コスト)」で終わらせるのか、それとも企業価値を高める「未来への投資」に変えるのか。その判断が問われています。

今回は、賞与と人件費の考え方を見直し、業務の最適化につなげるヒントについて、プロ子女史とぼしひこが話しているようです。ちょっと聞いてみましょう。

 

 

 

 ■賃上げラッシュの裏側に潜む「固定費増」の罠 

ぼしひこ(以下:ぼ) :はぁ~。プロ子ちゃん、ちょっと聞いてええ?

 

プロ子(以下:プ) :あら、大きなため息。今度は何を悩んでるの? 人材活用・相談のプロである私に話してごらんなさい。

 

ぼ:主語が無駄にデカい…‼
いやさぁ、やらんとアカンことが多なってきた時って、人増やしたら楽になる思うやん?

 

プ:普通はそう思うわね。労働力の確保のために賃上げを実施する企業が多いし、人手を募るのが一般的でしょうね。

 

ぼ:でもな、増やしたら増やしたで「人によってやり方が違う」「質がバラバラ」問題が出てくるねん…。

 

プ:それもあるあるね! じゃあ、その次に考えるのは“教育”でしょ。

 

ぼ:そこやねん! 品質のために教育せなアカンけど、人件費(賃上げ含む)+教育コストで負担が爆上がりやねん…。

 

プ:固定費が膨らむ典型パターンね。品質が安定するまで時間がかかるし、その間にまた賃金水準が上がったら目も当てられないわ。

 

ぼ:「お金払ってるのに思った通りに回らへん」って状態で…。どないしたらええんや…!

 

 

 ■「暫定請負化」で勝ち取る、戦略検討のための“空白の時間” 

プ:じゃあ、まずはマインド・リセットしましょうか。
意識してほしいのは「人を増やすこと」ではなく、「どこに自社の貴重な“人”という資本を投下するか」よ。

 

ぼ:資本の投下ぁ?どゆこと?

 

プ:まずは仕事を2つに分けるの。覚えてるかしら? コア業務ノンコア(非コア)業務。(※人プロつーしん56号『生産性改革の分岐点』)

 

ぼ:あぁ、絶対に自分でやらなアカン重要なやつと、まぁ人に任せてもええやつな。

 

 

プ:そのとおり。価値を直接創造する仕事がコアで、それを支えるための定型的な運営業務がノンコアよ。図にしてみたから見てちょうだいな(図1)

図1【コア・ノンコア業務 領域ピラミッド】

※画像をクリックすると大きく表示されます。

 

 

ぼ:ほーん、代えのきかへん領域=コア業務な。
ノンコア業務を請負化や外部に委ねる…そんな簡単に言う~?
「これはコア!」「これはノンコア!」って選別すんのも、現場はバタバタしてて大変やねん。

 

プ:だからこそオススメしたいのが「暫定請負化」よ。
「じっくり考える時間も惜しい!」という状態なら、まずは「これは任せても事故は起きないだろう」という定型業務を、一旦まるごと外(請負)に預けちゃうの。

 

ぼ:一旦預ける…??

 

プ:そう。そうやって「空き時間」を強制的に作ることで、経営者やエース社員が「本当に自社がやるべきコア業務」と向き合えるようになる。落ち着いて考える時間を作るための、戦略的な請負化なの。

 

ぼ:なるほどな…。人増やして管理が大変になるより、専門の会社に「成果」で任せる方が、管理の手間も教育費も浮くってことか。

 

プ:そのとおり! さらにこれからの時代、同一労働同一賃金への対応で、自社雇用だと説明責任も重くなるわ。でも請負なら契約に基づく「成果」が基準だから、コストも品質も予測しやすくなるのよ。

 

ぼ:でも、それでほんまにうまくいくん? 他の人に任せて上手く回るんか心配やし…。できるところは自分たちでやった方がええんちゃうの?

 

プ:まずは現実を見てちょうだい(図2)
厚労省の最新調査によると、賃上げ額も率も過去最高水準。詳細はココから確認してほしいんだけど、なんと企業の9割以上が賃上げに踏み切っているの。

図2【2026年賃上げの見通しグラフ】

(出典:厚生労働省 令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査※画像をクリックすると大きく表示されます。

 

 

ぼ:9割! みんな太っ腹やな~。

 

プ:そう思うでしょうけど、問題はそこじゃないのよね。注目すべきは定期昇給だけでなく「ベア(ベースアップ)」を実施した企業が激増していること[図表2]。これが何を意味するか分かる?

図表2【2026年における定昇およびベアの実施について】

※画像をクリックすると大きく表示されます。

 

 

ぼ:えーっと、みんなの給料の基本給が底上げされるってことやろ? ええことやん。

 

プ:経営側から見れば「一度上げたら二度と下げられない固定費」が、全社員分、雪だるま式に増え続けるってことよ。利益が倍にならない限り、いつか経営を圧迫するのは目に見えてるわ。

 

ぼ:うっ…! 確かに。業績がずっと右肩上がりならええけど、そうやなかったら恐ろしいな…。

 

プ:だからこその「請負化」なの。ベアで守るべきは、自社の価値を生み出す「コア人材」に絞る。それ以外の定型業務(ノンコア)は、請負化して「変動費」に変える。
そうすれば、景気の波に合わせてコストをコントロールできるし、コア人材には他社に負けない厚い賞与を投資できるでしょ?

 

ぼ:なるほどな~。これからの賃上げの見通しも含めてのリスク回避のためにもええっちゅう話なんやね。
ここまで聞くと、ええことだらけのように聞こえる…けど、オレは慎重派やからまだ悩ませてもらうで! それ以外にもメリットってあったりせーへんの?

 

 

 ■賞与を「コスト」から「投資」へ変える人的資本の循環モデル 

プ:ここからが「夏の賞与」の話に繋がる、一番大事なポイントよ。
ノンコア業務を請負化して「変動費」にすることで、浮いた固定費の原資を、コア人材への賞与やリスキリング費用に回せるようになるの。その循環をまとめたのが、このモデルよ。見てちょうだい(図3)

図3【人的資本の循環モデル】

※画像をクリックすると大きく表示されます。

 

 

ぼ:ほほーん、一回任せて終わりやなくて、どんどんノンコアを切り出して、自分らはコア業務に特化していくんやな。

 

プ:そう! ノンコア業務で手がいっぱいだった人たちをコア業務に集中させるから、ただ人を増やすよりもコストを下げられるわ。

 

ぼ:浮いた分のコストを賞与とかリスキリングに、ってのはそういうことなんやね~。…ところで「人的資本」って何?

 

プ:自社のコア業務にあたってる人材を「資源(消費するコスト)」ではなく、付加価値を生む「資本」と捉えて、その価値を最大化させる経営手法のことよ。

 

ぼ:なるほど~。重要なお仕事する人の育成にもつながるし、この循環モデル、めっちゃ合理的でええな! 皆それやったらええやん!

 

プ:でも、多くの会社は逆をやってるのよ。

 

ぼ:逆…? 右回りと左回り…? トリプルアクセル決められるんは右回転か左回転かどっちなんや…ってこと?

 

プ:マインド・リセットしすぎて思考が高速回転してるわね…(苦笑)。
多くの会社は「全員に均等に」分配しようとして、結局コア人材への報いが薄くなり、エースから辞めていく…という悪循環に陥っているの。

 

ぼ:うわ…耳痛いやつや…。でも、この循環モデルなら「価値を生む人(人的資本)」に集中して投資できるから、会社が強くなるな!

 

プ:「全部やる」のをやめて、「選んで集中する」。これが2026年流の夏の賞与の考え方よ。
100%完璧な切り出しを待っていたら、2026年の賃上げウェーブに飲み込まれちゃうから、まずは“暫定”でいいから、一部を変動費に変えて身軽になりましょう!
総務の月次書類整理、工場内の仕分け作業、ECサイトの商品登録とかがオススメね。

 

ぼ:よし! ほなこの夏の賞与をええ投資にするために、まずはどの業務を「暫定請負」に出せるか、棚卸ししてみるわ!
まずは業務の切り出しを考えるんを…プロ子ちゃん、一緒に見てくれるぅ…?

 

プ:もちろん! 無理に一人で抱え込まずに、いつでも気軽に相談してちょうだい!

 

 

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